最近読んだ本あれこれ

 

あんなの、扱い方間違っただけですぐ死にそう

深沢仁の短編集『眠れない夜にみる夢は』がものすごくよかった。「なにも傷つけないように、おやすみ」と「家族の事情」がとくにお気に入り。

冒頭の引用は「なにも傷つけないように、おやすみ」から。とある人物が発したこの言葉がとても記憶に残っていて、それはたぶん、自分も、似たようなことをよく考えるからだと思う。30ページほどの短い話なのに、この言葉の印象が途中でぐっと変わるところがあって、そこがとても好き。

「家族の事情」は、自分たちを少し歪だと思っている弟と姉の話で、姉の結婚相手、つまり義理の兄になるひとを弟が探そうとする……ところからはじまるんだけど、これがすごくよかった。わたしはこの作者さんの書く、ひととひととの関係性や、向き合い方、すれ違い方がとても好みなのだな〜と思いました。

それと、あとがきのBGM紹介が嬉しかったな!Thee Michelle Gun Elephant が聴きたくなった。ので、聴きながらこれを書いているいまです。

 

 

忘れない、と思う。わたしは絶対に忘れない。それがあったことも、その時に発生した怒りも不快も、時間が経ったからって許さない。

高瀬隼子の『いい子のあくび』を読みました。『おいしいご飯が食べられますように』もだったけど、ふだん考えるのをちょっと躊躇ってブレーキかけてしまうようなところを、絶妙にすくい上げるのが上手いな〜と思った。うわ〜わかる〜になってきてもうだんだん読むのがしんどくなってくる。主人公のTwitter*1の使い方が嫌すぎる。怖えよ!

助けてもらえる、と軽んじられる、はたぶん紙一重のところがあって、この話どこへ行き着くんだろうとめちゃめちゃ不安になりながら読んだが、ラストページにぐっときたので、読んでよかったな、と思いました。

 

 

それが過去というものです。

ちまちま読んでいた『てのひら怪談 ずっとトモダチ』を読み終えた!おもしろかった……怖かったぞ!!令丈ヒロ子をかなり久しぶりに読んだがやっぱり好きだな〜となりました。改めてメンバーがめちゃめちゃ豪華!

恒川光太郎の「卒業」がものすごく好みだったな。あっけなく訪れる終わりと、これからも世界は続くんだよ、という予感のようなものが感じられてとてもよかったです。

 

 

どうして、そういう沢山のことを忘れてしまうのだろう?

大事なことも、しだいに薄れていき、大事ではなくなる。

森博嗣『馬鹿と嘘の弓』が文庫化したので再読しました。やっぱりこれ、クリティカルヒット入るな……。斜線堂有紀の解説がよかったです。読みながら「何かが出来るからいじめらんないって怖い話だよな」という台詞を思い出していた*2。持たざる者は、どうしたらいいんだろうな。

 

 

それだけ、ねぇ。役者にとっちゃあ、それがすべてだ

蝉谷めぐ実の『化け者心中』が……最っっっっ高におもしろかった!!!!これこれこれ!!!!わたしがエンターテイメントに求めるものすべてが詰まっている!!!!

江戸を舞台に、元女形の魚之助と鳥屋を商う藤九郎が、役者に成り代わっている鬼を探すというあらすじだけでもうわくわくが止まらんのだが、このふたりがまじでめちゃくちゃいいんですよ!!テンションが昂ぶりすぎてさっきから語尾に感嘆符をつけまくっている!!

なにかひとつのことにすべてを賭けられるひと、賭けたことのあるひとの話がわたしは好きなんだろうな〜と思う。そのうえでそれを奪われたひとがどう生きるか、みたいな話のなかでもこれはとりわけ好みだった。あと自分は虚構が大好きなので、いろんなところで非常にぐっとくるものがありました、まじでよかった……語彙力と文章力が足りねえ……ありとあらゆる言葉でこの本の素晴らしさを語りたい……。

文庫化をきっかけに手にとったのですが、装画があまりにも良すぎて単行本も買ってしまった*3、眺めてはにこにこしています。続編も買ったぜ!読むぞ!!

 

言えない言葉が内側に渦巻いているから、踊りが饒舌になるんだ

芝居や芸術を扱った小説が読みたい!!になったので芦沢央の『カインは言わなかった』を読みました。とつぜんこんな本が読みたい!!になったときに深夜だろうと早朝だろうとすぐ読むことができるので、積み本は一生やめられないと思います。

公演直前に姿を消した主役の男にいったいなにがあったのか?という話なのだが、読んでいて、あーこれいいな、ぐっときたな、となったのは、「本当のこと」に対する捉え方で、これがとてもよかったです。

芦沢作品の『夜の道標』を読んだときにも近いことを感じて、さまざまな作品で同じテーマやモチーフを繰り返し扱う作家が好きなので、これからも芦沢作品続けて読んでいきたいな〜と思いました。おもしろかった!

 

そして……京極夏彦『鵼の碑』を読み進めている!!まだ途中だがめちゃめちゃおもしろい!!!400ページ近く読んだがまだこんなに未知のページが残っている幸せ!!!分厚い本って素晴らしい!!!!

 

*1:いまはもうTwitterではない。なんか寂しくなってしまった

*2:斜線堂有紀の『奈辺』だったはず

*3:折り返したところと裏表紙がめちゃめちゃいいんです、文庫本はカットされてる